表紙の角を補修する


前回お伝えしました、革漉きの練習の後、いよいよ実際の本の補修に入ります。
18世紀の革装本です。
余裕がなくて、うまく写真がとれていません。申し訳ありません。

まず、ボードの欠損を補修します。

そこに練習の成果の革をはめ込みます。これは漉いた状態です。
外側はごく薄く、中央はそれなりに。そして境目は凹凸があってはいけません。

革を貼ってから元の革との境目をなくすために、今度は表面の厚さを調整します。

角の補修が終わった状態。

つづく

革装本を革で補修する その前に・・・


年が明けてからは再びリシュリュー館に戻ってまいりました。
そして第2のヤマバである、革装本を革で補修するという研修に入っております。

まず3冊の資料を研修用にいただきました。全ページのクリーニングからはじめます。
続きまして修復に・・というわけにはいきません。
革を薄くする作業(革漉き)の練習から入ります。革漉き包丁の持ち方からはじまり、研ぎ方の練習を延々と続けます。
私は革漉き包丁を持っていなかったので、はじめは研修生用のを使わせていただきました。革漉き包丁というのは、クセがつくので他人には使わせてはいけないものなのです。こちらの製本学校では、「革漉き包丁と歯ブラシは人のものを使うな」と教えられるそうです。私の包丁は過去に研修生2名が使ったものですので、私のクセになるまで研ぎ続けます。そしてようやく革に触れることができます。
まず大きな革で練習します。

(私の手ではありません。)


慣れてきたら、課題が出されます。渡されたのは5センチ角の革。
周囲がとても薄くて、中央はやや薄く、どこも均等になっています。
「同じようにしてみて。デコボコがあったらダメです。いい練習になるでしょ。じゃ、頑張って!」と言って去って行くのでありました。ヒント欲しいでッス・・。と思いながら悪戦苦闘、七転八倒の末、革のカスまみれになり、ようやく5センチ角でOKが出ても、まだまだ敵は手強いのです。


最終的に角の補修に使うのは、

このような形の革なのでありました。

和紙で革装本を補修する


前回ご紹介しました、革装本の和紙での補修を今回は少し細かくご説明させていただきます。
BnFのHPには写真入りで方法を説明したファイルがあります。
http://www.bnf.fr/pages/zNavigat/frame/infopro.htm?ancre=conservation/conservation.htm
の fiches pratiques>restauration
に「Le traitement de conservation des reliures anciennes en cuir effectué avec du papier japonais 」
というのが、「革装本を和紙で補修する」のファイルです。


とれた表紙は糸で綴じつけます。
上記のサイトの「Le rattachement des plats 」のファイルも合わせてご参照ねがいます。
本文側に通した糸を表紙に取り付けます。


花ぎれは今回の資料の場合、片方は残っていたので、それと同じように編みます。
資料に直接編むのではなくて、和紙で土台を作ってそこに編んだものを貼付けます。

↑花ぎれを編もうとしている様子


背の一部が欠けているところは、和紙で補います。同じく、もう片方は残っていたので、同じような形にもって行くようにします。

あとは元の色に近づくように補彩をし、和紙の毛羽立ちはクルーセルGでおさえます。


それで前回の記事でご紹介した写真のようになります。

今年もよろしくお願いいたします


遅ればせながら・・。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年の目標は「ブログを頻繁に更新する!」です。


内容はまだ昨年の内容です。
11月から年末にかけては、私の研修の第一のヤマバである、「革装本を和紙で補修する」という研修でありました。

この補修の対象となるのは、
・表紙と背のジョイント部分が壊れてしまい、表紙が外れてしまった。
・背の上の部分、もしくは、下の部分が外れたかなくなってしまった。
というものです。
どちらの場合も中の本文紙の綴じは異常なしというものがほとんどで、19世紀以降の小型の印刷本が中心です。

和紙を使った補修では、これらを10時間以内で補修することになっています。

たとえば、この本の場合、


片方の表紙が外れ、背の上部が欠損し、花ぎれもない。
また表紙の角はぐらぐらしているという状態です。

これらをまずクリーニングからはじめ、表紙の角を補修し、表紙をとりつけ、花ぎれをつけて、背の上部を再形成する。
そして、最後に補彩をします。

そしてこのようになります。

次回はどのようにするかをお伝えいたします。





保存製本


プロバイダーの調子がすこぶる悪く、更新がまたもや滞ってしまい申し訳ありません。

11月23日の懇話会が終わって、その週と12月の1週目は保存製本の研修でした。
保存製本というのは、いわゆるリンプベラム製本を応用したものです。
「リンプ装」などで検索をかけていただくと詳しい説明が出てくると思います。
1966年のフィレンツェの洪水のとき書物の復旧作業にあっていたクリストファー・クラークソン氏が16世紀から18世紀のパーチメントのカバーのリンプ装の書物が、革装本に比べ被害にあっても状態がよかったことに気づきます。
この製本は、接着剤を使わず、可逆的であり、開きもよく、開閉の際の負荷もかかりにくいことから、保存製本に応用されるようになりました。
というわけでこちらの修復指示書では「クラークソン製本で」という指示になっています。
フランス国立図書館の資料保存のサイトにもありますので、ご参照くださいませ。
http://www.bnf.fr/pages/infopro/conservation/cons_fiches_restaur.htm
「La reliure de conservation」というものです。

まずはサンプルを作ります。
お手本とレジュメを渡され、これまでに一度だけ作ったことのある人と一緒に、読みながら進めていきます。

こちらがお手本です。

紙を切って折るところから始めて、綴じて、花ぎれを編んで、表紙をつけます。
サイトですとPDF2枚ですが、いただいたレジュメは写真がたくさん入った29枚の超大作。
おかげで、写真を見て、説明を読んで、時にはお手本を分解して、なんとか出来上がりました。


サンプルの表紙と見返しはパーチメントではなく、パーチメント風の紙です。「ハハハ」に見えますね。

この方法は、主に表紙がなくなってしまったものに用いますので、実際に使うことはそんなに多くないようで、当初はサンプル作りだけで終わる予定でしたが、いつの間にか用意してくださっていました。

サンプルの後、すぐにこれですか?と驚愕したのですが、指導の方との共同作業ですので安心です。
本文ブロックはこの状態のままで大丈夫ですので、新しく支持体部分を延長し、表紙をつけます。

今回は、見返しも表紙もパーチメントですので、表紙に必要な寸法の計算も2人で何度も確認し、コードを通す穴は、まず紙で型紙を作ってそちらに穴をあけ、OKをいただいてからパーチメントに穴をあけました。

というわけで完成したのがこちらです。

11月23日


11月23日はフランスは祝日ではありません。こちらは休暇は多いですが、祝日が日本に比べてとても少ないです。そして、日曜と重なっても振替にはならないので、みなさん翌年のカレンダーがくるとまず祝日が何曜日かを確認します。

この日は修復アトリエ交流会とでもいうのでしょうか、年に1回、パリ近郊にある修復関係機関(公文書館ルーブル美術館文化財研究所など)が集まって、研究内容や修復事例、受講した研修などを発表する会でした。これは、修復を学ぶ学生など外部にも公開されています。毎年テーマがあるようで、今年は紙の透かし模様のことが中心でした。とても興味のある内容なのですが、レジュメもなく、なかなか言葉がついていけず残念でなりません。午前も午後もお昼以外は休憩なしで、7本の発表がありました。

毎年行われているこの会のもう一つのお楽しみはお昼の懇親会です。各自が食べ物や飲み物を持ちよって立食パーティーとなります。
手作りのキッシュやピザ、パテ、名前はわからないけどとにかくおいしいもの、そしてデザートも手作りのフルーツのタルトやガトーショコラ、クレープなどなどがたくさん並べられて何もない空間がいつのまにかパーティ会場になっていました。お料理もおいしくて、パーティのセンスも素敵、お偉方の挨拶もナシ!ただ食べておしゃべりしてという気さくな懇親会でした。


あまりにも更新が滞っているので、週末にこれまでの分を頑張って取り戻すとともに、同時進行で近況もお伝えしていきたいと思います。

手製本の係


リシュリュー館での2週間研修を終えて、トルビアック館に戻ってまいりました。
手製本の係での研修です。1ヶ月の予定でしたが、当初予定していた研修先の都合が悪くなり、1ヶ月半の研修となりました。

ここは、主に機械製本には出せないものを手で製本するという部署です。
職員数は9名で、うち1名は箔入れ専門の方です。


手製本にするか、機械製本にするかはきちんときまりがあって、樹形図になっています。
まず、以前に図書館で製本されたものであるか、出版した当時のものであるかの2種類のバージョンがあります。
それぞれ
綴じが健全か?
背のコードは本物か偽物か?
紙の状態はよいか悪いか?
新しくつけるカバーは革かクロスか?
で分かれていきます。
出版当時のままのものは、裏書きがあるかどうかという項目も加わります。

そしてこの手製本係に搬入されたものは、まず、責任者が数と内容の確認をし、担当に振り分けます。
以前製本準備でお伝えしたように、1冊に1枚の指示書が入っています。
各担当は作業書の指示のとおりに製本します。
もし、そこで疑問があれば、責任者と話し合い、処置が指示書のものと変更になった場合、責任者がサイン入りで書き加えます。

SDカードが壊れて、写真がほとんど消えてしまいました。カナシイ。
なので今回は写真なしです。